発見される前の貝塚

ただ積み重ねる

2017年やっていたこと:映画編/クリント・イーストウッドとトム・ハンクス映画の網羅

なぜやっていたか

学生の頃からアメリカ政治にハマっていたが(もとは現代政治学専攻)、ドナルド・トランプ氏が当選してからより「This is アメリカ」的なものに興味を持ち、エンタテインメントを調べて見ようと思った。そこで共和党支持者のイーストウッド民主党支持者のトム・ハンクスの作品をとりあえず見ようと思った。

どれくらい見たか

イーストウッドは監督映画をほぼ網羅して出演作品を見始めている。トム・ハンクスのほうは「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズがどうしてもまだ手付かず。フランスが舞台であり、宗教学、美術史に興味がないためにスキップしているのだが、つまること自分の知の不足を示しているだけなので克服したい。なお、出演作品については主演作以外は見ていない。

弊害

イーストウッド作品はネットの配信サービスにわずかしか掲載されておらず、両者の監督/出演作品で古いものはレンタルDVDショップの店頭にも殆どない。視聴するために「TSUTAYA DISCUS」に加入した。

もともとのお気に入り

グラン・トリノ」:「これが強いアメリカだ!」というのをイーストウッドが役で体現している。朝鮮戦争の帰還兵、フォードの工場員として働いていた一人者のイーストウッド。戦争の傷から、心をずっと閉ざしていたところに、モン族の少年と少女がやってきて心を開き始める。ギャングにいじめられる彼らをイーストウッドが助ける。共和党らしさがある。アメリカの一部の道徳心を見た。

グリーンマイル」:死刑囚が収容される刑務所が舞台の映画。トム・ハンクスは看守役。嫌がらせをする看守から、水を含ませないスポンジで死刑を執行された男のシーンが衝撃的で、脳裏にこべりつき、心を痛めた。言葉にできない苦しみを感じて、何度も泣いた。小学生の時に見て以来、法と政治に興味を持ったような気もする。

新しいお気に入り

トニー・ベネット:ミュージックネバーエンド」:トニー・ベネットの歴史を遡る。シナトラとトニー・ベネットを調べていたがのだが、作品の中でイーストウッドとも繋がって嬉しくなった。ヒット曲「I Left My Heart in San Fransisco」のエピソードには、イタリア系アメリカ人の生きることの難しさが裏打ちされていてよかった。


Tony Bennett - I Left My Heart in San Francisco (from MTV Unplugged)

「ビッグ」:12歳の少年が突如青年の体(トム・ハンクス)になってしまうも、「子供みたいな大人」として評価され、おもちゃ会社で働き始めるコメディ映画。どんなときもそばに居てくれる友達、迎えてくれる上司、抱きしめてくれる彼女、待っている家族の全てが詰まっている。大事な人と見たい。


Big (1988) - Playing the Piano Scene (2/5) | Movieclips

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」:80年代、ソ連の侵攻から救おうと、アフガンに軍事支援した米国民主党下院議員の実話。チャーリーをトム・ハンクスが演じる(民主党支持、リベラル)。たとえそれが善意、努力した結果、一時は評価されたとしても、悲劇的な結末(9.11)を生み出してしまったというのがとても酷い。作品では描かれていないが、チャーリーはテロ事件後もイスラム武装勢力への支援を後悔しておらず、戦っているのはソ連であるとしていたのが驚き。この点、トムは演ずるのに抵抗はなかったのか?


Don McLean performs American Pie live at BBC in 1972 - Newsnight archives

わかりはじめていること

イーストウッド作品は見れば見るほど「よきアメリカ」、さらには「善良なアメリカ人(=キリスト教徒でヘテロセクシュアルな白人)」についてイメージが固まってくる。見た目もかっこよければハードボイルドな姿に、石原慎太郎的(石原裕次郎的)なものを感じてある意味うっとりする。(ちなみに石原慎太郎イーストウッド2005年に会談している。)

トムハンクス作品は、感動しているうちに「正しさ」を植え付けられている作品が時々ある。共感もあるが違和感もあるのは、イーストウッドを並行して視聴していたからだろうし、アメリカ人以外の人間として、語るべき背景をスキップしていると私が感じるところもあるからだ。

おわりに

異なる思想を持った2人がタッグを組んだ「ハドソン川の奇跡」という映画がある。イーストウッドの監督作品にトム・ハンクスが?と思ったが、たしかに近年のイーストウッド作品は単純な愛国作品にとどまらず、あらゆる立場の人間の繊細な感情を示しているように受け取れる。加えてこの「ハドソン川」は人種問題や戦争の要素を含んでいないので、トムも歓迎して出演する気になったのだろう。受け入れられる部分、受け入れられない部分を認め合い、良いものを作ろうと切磋琢磨し合える関係は素晴らしい。